09
「ねぇ、君、マルフォイと知り合いってことは君もそっちの人?」
「ううん、私はマグル出身だよ」
そっちって、どっちさ。
「どっひゃー!マグル出身の君が、あの純血主義のマルフォイと仲が良いなんて雨が、ううん、嵐が来るかも!」
大袈裟なリアクションありがとう、ロン。そして、窓の外は快晴だよ。
「へぇ」
きっと言葉の半分も理解していないだろうハリーの相槌を掻き消すように、またまたコンパートメントの戸があいた。
「いったい何やってたの?」
顔を出したのは一人の女の子。そう、この物語のヒロイン、前歯がちょっと大きくて、ふわふわな栗色の髪をもつ、ハーマイオニー・グレンジャー。
か、か、か、可愛い!ちょー可愛い!可愛い!可愛い!可愛い!可愛い!
心の中で連呼し過ぎて涎が垂れた。じゅるっ。
私がハーマイオニーに目をキラキラさせていると彼女がロンに着替えるから出ていけと言われたので、私も慌てて立ち上がる。
「First name、何で君まで出て行くんだよ」
ロンに言われ、はぁ?と頭を捻る。
え、もしや君……馬鹿?
「あら、あなたさっきはいなかったわよね?」
「うん。First name・Family nameです」
「私、東洋人に初めて会ったわ。ところで、First name。あなた女の子よね。何故、男子の制服を着ているの?」
「……えー!!」
二人の見事な叫びがコンパートメントにまた響く。箱の小ささを考えなさい。
「あなた達、気が付かなかったの?」
私の代わりにハーマイオニーが呆れたように言ってくれた。
「First name、き、き、君、お、女だったのかい?」
ロンは目を丸くしてる。驚きすぎて喋り方が、まるでクィレル教授じゃないか。
「うん」
「じゃあ、行きましょう」
飄々と答えた私は某然と立ち尽くしている二人を放置し、ハーマイオニーに連れられてコンパートメントを後にした。
「改めまして、私ハーマイオニー・グレンジャー。よろしくね、First name」
「うん、よろしくー」
「で、あなたは何故男子の制服を着ているのかしら?」
あなどれねー、ハーマイオニー。
あはは、と苦笑するのが精一杯。
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