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07

まさかマルフォイ家の方々に「いってらっしゃい」と見送られ機関車に乗ることになるとは思いもしなかった。

私はドラコと別れ一人で機関車に乗り込んだ後、手を振り見送る人達をしばらく眺めていた。


「ただいま」


そっと零した言葉は一年後、何処の誰に伝えたら良いのだろうか。帰る場所のない私は誰にただいまを言えば良いの?

一瞬思い浮かんだ人の顔に苦笑し、私はコンパートメントを探すため揺られながらゆっくりと歩き始めた。

生徒たちでごった返していた通路も次第に人気がなくなってくる。きっと皆、知り合いを見つけコンパートメントで他愛ない話で盛り上がっているのだろう。

痛々しいほど刺さる異国人を見る好奇心いっぱいの視線から逃れられたのは良かったが、さすがにこのままホグワーツへ向かうのは正直辛い。体が若くても心が年寄りなため疲れてくるのだ。

コンパートメントを覗き込めばどこも外人の子どもでうまっている。いくら自分がここにいる子どもたちより年上で、言葉の壁がないと言ってもその中に平気で突っ込んでいけるほど私には社交性も無神経さも持ち合わせていなかった。

もう通路の端っこてしゃがんでようかななんて諦めかけた時、目の前に何やら黒い物体が横切った。


「ん?」


何だと目を凝らした直後、両目はこれでもかというほど見開かれた。


「ひっ」


恐怖で叫び声も上げれないとはこのことだ。詰まった悲鳴に一瞬呼吸することさえ忘れてしまった。


「おい、リー。しっかり捕まえとけよなー」

「ごめんて」

「お?何やら被害者がいるぜ」


コンパートメントから顔を出したのは燃えるような赤毛を持つ長身の二つの顔。しかも同じ顔。

もし、私の思考が正常に活動していたらそらはもう両目を輝かしてニヤけていただろう。しかし、今の私にそんな余裕の欠片なんて残されてはいなかった。


「あ、ジョージやばいこの子。息してない」

「ばか、フレッド!おい、大丈夫かい!?」


私の顔の前で手を振り、呑気にそんなことを言った片方に、もう片方は焦ったように私の肩を掴み揺さぶった。


「リー、さっさと片付けろよ」


揺さぶってない方がドレッドヘアーの男の子に言えば、その子は申し訳ないなさそうにそそくさとその黒い物体を箱の中に入れた。


「大丈夫かい?」

「……ッ、あ、は、はい」


心配そうに顔を覗き込む少年にようやく我に返った私は今度は少年のイケメンさに顔を赤くしたのだった。

あ、あれがリーのタランチュラか。

そしてウィーズリーの双子、めっちゃイケメン!

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