04
9と5/4番線。駅は上を向いて歩こう。ダンブルドア校長に初日にかけられた魔法は会話だけでなく文字にも有効だった。すらすらと英文を読めてしまう自分に頭が良くなったと勘違いしてしまう。
「6、7、8、あっ、9」
あったあったと喜びも束の間、燃えるような赤毛集団が前から近付いてくるのが見えた。
「げっ」
察した私は慌てて柱の陰に身を隠す。
あれ?何で隠れるんだ、私。
自分でも分からない不思議な行動に首を傾げながら赤毛集団ことウィーズリー家を覗き見る。すると黒髪の少年が赤毛集団に近付いて行った。
「あ」
これが、私とこの物語の主人公が交わった瞬間。ホームに響くアナウンスの声も、人々のざわめきも列車の近付く音も、全部全部遠くに聞こえる。
「あぁ」
無性に切なくなるのは何故だろう。無性に黒い感情が生まれるのは何故だろう。それは、君が正義だと謳っているから?
次々と柱に消えていくそれを、私はただ見つめてた。
「あ、やばっ」
我に返った私は慌てて柱から飛び出した。
乗り遅れる!
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