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01

真っ赤なアネモネから流れ落ちた雫は、まるで誰かの赤い泪のようだった。

打ち付ける雨は体から熱を奪っていく。それでも私は右手に握りしめている色褪せたビニール傘をさそうとは思えなかった。込み上げてくる熱い感情を押し込める方法を他に思い浮かばなくて。


大丈夫、大丈夫だよ、私。
泣かない、私は、泣かないから。


抑えるように握り締めた拳は爪が食い込んで痛かった。でも、今の私にはその痛みも淀んだ感情を紛らわしてくれるようで心地良い。

冬の夜。空気が澄み渡り、隠れている星たちもちらちらと輝き出す。何よりも冷んやりとした空気が心地良くて私は好きだった。身に纏う重苦しい空気を浄化してくれているように感じたんだ。


大丈夫、大丈夫、こんな気持ちも一時だ。またいつも通り笑える。大丈夫、笑える。


取り分け秀でたところも劣ったところもなく、言うなればクラスの末端にいるような平凡な人間が私だった。

誰かに好かれるほど美しくも良い性格もしておらず、誰かに嫌われるほど誰かと深く関わる人間ではない。

そんな私にだって人並みに悩むし、そんな私だからこそ、この世界が息苦しくてしかたなかった。

だから、こうしてたまに私は息抜きをする。自虐的で笑える行為も、私にとって均衡を保つ大切な儀式なんだ。

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