03
玄関の前には見覚えのあるターバン。
「お、お待たせしました」
思いがけないお茶会に城の中を駆けてきた私は息を乱しながら謝罪する。
「よ、良かった、ね、寝坊し、したのかと、お、思いました、よ」
「あはは……」
いや、もう、本当すんごいどもりですね。何度聞いても慣れないんですけど。
「申し訳ないです」
「い、いえ、それ、それにしても、み、ミス・Family name、その、その格好は、ど、どうしたんですか?」
あぁ、うっぜー。文節区切り過ぎで、聞き取りずらい聞き取りずらい。
「あはは、先生は気にしないで下さい」
あなたとの会話は疲れるので、なるべく手短かに済ませたい。
「……そ、そうですか?」
「はい、それではお願いします」
ホグワーツの敷地を出て、駅まで付き添い姿現しをしてもらうのだ。
「わ、わかりました。し、しっかり掴まって、く、ください、ね」
「はい」
ちょっとにんにく臭いのが気になったけど、バラバラバギーになるのは勘弁なんで、しっかりと掴まらせていただいた。
頼りなさすぎるターバンことクィレル教授だけど、闇の帝王が憑いてるぐらいだし、魔法は失敗しないだろうと、変な安心感があったり。
「うおっ」
ぐるぐる回って、危うく倒れそうになったけど踏ん張って何とか態勢を整えた。
「そ、それでは」
パチッと音を発てて「え?」と私が振り返った時にはもう、ターバンの姿は消えていた。
「薄情な……」
倒れそうな私に手を差し伸ばしもせず、しかもさっさと帰るとか、酷すぎる。
ざわざわ、がやがやと久しぶりに感じる沢山の人の気配に今更ながら恐ろしいと思った。
「さっそく、迷子?」
外人さんばかりのロンドンの駅にぽつんと一人の日本人。さてさて、私は無事に列車に乗ることができるのか。
最初の関門はキングズ・クロス駅でホームを見つけることらしい。
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