×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
14

零れた茶葉の香りが鼻について離れない。何だと言うのだ。あんな甘ったるい香りの紅茶なんぞ自分の好みではない。だが、あの香りを思い出すたびに、あの熱く情熱的な感情が溢れ出してくる。


「ちっ」


セブルス・スネイプは収まらない熱と苛立ちに困惑したのだった。

一方、部屋に戻ったFirst nameはベッドに伏せたままぴくりとも動かないでいた。箪笥の上にいる鷹はFirst nameから視線を外すことなく、じっと彼女を見つめている。

シーツを握り締める手は白く色褪せていた。微かに震える肩。泣いていたのかもしれない。

ようやく顔を挙げたのは月が天高く昇った頃。外は闇に包まれている。部屋は灯りもつけていない。しかし、月明かりがちょうど窓から差し込み、充分なほど明るく照らしていた。


「……はぁ」


情けなくも零れたのは、ただの息。感情的だった自分に恥ずかしさをようやく実感する。

鏡に映ったのは泣き腫らしたぐちゃぐちゃな顔した幼い自分。一ヶ月のもやもやした泣きたい気持ちが爆発したらしい。


「どうしよ……ッ、私、独りだ」


こんなに苦しいのに、こんなに辛いのに、こんなに怖いのに、なのに、私を抱き締めてくれるのは自分の幼い腕だけ。


「どうして!どうして!どうしてぇぇぇ!」


誰を恨めば良いの?誰を罵れば良いの?

誰に、この真っ黒な気持ちをぶつければ良いの?

[ 22/125 ]

[*prev] [next#]
[目次]
[]