02
それは、美しかった。
「あそこを見ろ。地面に光った物が見えるか?銀色の物が見えるか?ユニコーンの血だ。何者かにひどく傷つけられたユニコーンがこの森の中にいる。今週になって二回目だ。水曜日に最初の死骸を見つけた。みんなでかわいそうなやつを見つけだすんだ。助からないなら、苦しまないようにしてやらねばならん」
私は想像した。銀色の血を流し、嘆き苦しむユニコーンはどんなに美しいのだろうか。
狂気がざわめいた。
皆が組み分けをしている間に私はじりじりと銀の溜まりに向かって足を進めていた。
光が無いのにキラキラとシルバーブルーに輝くそれは私のそれと比べ物にならないほど美しかった。地面に膝と両手を付き顔をそれに近付ける。
どんな味がするんだろう。やっぱり鉄の味がするのかな?
そんなことを脳内で巡らせれば自然と舌がそれに延びていた。
不意に羽根の音した。普段ならば音もなく飛ぶ鷹が羽音を出し、銀の血から引き離そうと顔の前で羽ばたかせる。
「……ッ」
私……今、何を。
動悸がする胸元を、心臓を掴むように握り締める。
「ありがとう、レイ。助かった」
ふらふらする足に力を込めて立ち上がり、砂の付いた膝と手の平を払って皆の元へ戻った。その姿を彼が心配気な眼差しで見守っていることも知らず。
「First name、お前さんはネビル達と行ってくれ。頼んだぞ」
「りょーかーい」
何とも気の抜けた返事をして私はさっさと歩き始めた。あの血ように青白くなっている顔を誰にも悟られたくなかったから。
少し歩き二手に別れた。
「あ、あの、First name、大丈夫?」
「え?」
私は私より少しだけ背の高いネビルを見た。
「ふ、震えてるよ」
そう言って自分だって震えている指で私の手を示した。
「そりゃあ怖いでしょ?ネビルくん」
「僕、First nameには怖いものなんてないのかと思ってた」
「あはは、何それ」
笑ってみせた。
「この前のFirst name凄かった」
あぁ、あれね。ダンブルドアに怒られて、その上罰則までさせられちゃってる、あれね。
「父上が感心していた」
「ルシウスさんが?」
急に会話に入ってきたドラコに首を傾げる。
「あぁ」
ダンブルドアには怒られてルシウスさんには感心されて、ネビルには凄いと思われ、皆には怖がられ。いったい何なんだ。
てかドラコ、いちいちルシウスさんに報告しないでよ。死の呪文を知ってるなんて知られたら後が面倒だ。
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