10
聞いて、酷いのよ?セブルス・スネイプったら。
あいつが酷い奴だというのは既に周知だろう。
そうね、でも落ちたのは私がいけないんじゃないのよ。
だな。
ドラコも素敵な王子に見えたのに、いつも爪が甘いのよね。
王子?
そう!あのプラチナブロンドは、まさに王子の証!
はっ、言っていろ。
なんて会話をしてから数週間。私の、見事な空中ダイブの話もようやく薄れて来た頃、またもやハリー少年は面白いことをしていた。
なんと、あのクィレルを励ましているではないか。後頭部に宿敵がいることも知らずに、なんと滑稽な。危うく、笑い転げるところだった。
きっとハリー少年はスネイプとクィレルの密会を目撃したのだろう。だからと言って、擦れ違う度に温かい眼差しを向けるし、ロンはロンで、クィレルのどもりをからかう連中をたしなめているし。
あぁ、可笑しい。
「随分、楽しそうだな」
「うん」
だって、なんか面白くて。まさか、こんなに面白いシーンだとは知らなかった。盲点とはこのことか。
「良いのか?」
「何が?」
「ハーマイオニーと待ち合わせした時間を過ぎた」
「げ」
読んでいた絵本から顔を挙げて、腕時計を見れば確かに時間は過ぎていた。
「言うの遅い!」
私は慌てて勉強道具を抱え、談話室へと続く階段を駆け下りた。
ハーマイオニーと勉強会。ご機嫌な一方、今最大の障害はハーマイオニーだった。
「ハーマイオニー、試験はまだずーっと先だよ」
ハリーの言葉に内心大きく賛同した。しかし、ハリーの味方に付けばハーマイオニーの機嫌が悪くなるのは目に見えているため、あからさまに頷いたりはしない。
「十週間先でしょ。ずーっと先じゃないわ。ニコラス・フラメルの時間にしたらほんの一秒でしょう」
いやいやいや、君達どんだけフラメルさん探したのよさ。その探究心、感心通り越して、呆れるわ。
イースター休暇は散々だった。先生方も大量の宿題を出してきた。どうやら教師陣とハーマイオニーの脳内は試験で埋め付くされているらしい。
私は一人じゃないと集中できないなんて言って部屋に籠もったけど、ハリーとロンはハーマイオニーと図書館で過ごしているようだ。
あぁ、可哀想に。
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