08
「いいこと?二人共、忘れちゃだめよ。ロコモーター モルティスよ」
「わかってるったら。ガミガミ言うなよ」
ロンは杖を袖にしまいながら何度も言うハーマイオニーにピシャリと言った。
今日はクィディッチの試合。それも、あのセブルス・スネイプが審判を務める試合の日。グリフィンドール生は、スネイプが何かするのではないかと息巻いていた。
相変わらずクィディッチの日はお留守番なレイを想って、私は晴天の空を見上げていた。一応、杖を握って。
「スネイプがあんなに意地悪な顔をしたの、見たことない」
ロンの言葉にスネイプを見れば、いつもと変わらぬ無表情。ロンの色眼鏡も如何なものかと苦笑していれば、ドラコ登場。
「さぁ、プレイボールだ。アイタッ!」
「あぁ、ごめん。ウィーズリー、気が付かなかったよ」
「ドラコ」
嫌な顔をする二人と反対に笑顔を咲かせる私。
「やぁ、First name。元気かい?」
「うん。あ、腕時計ありがとう」
私は右腕のローブを軽く捲って腕時計を見せた。
「あぁ、よく似合ってる」
眩しそうに笑うドラコに鼻血が出そうだ。さすが英国紳士。否、ルシウスの息子。意味深な笑顔にお姉さん心臓ドッキドキだよ。
「グリフィンドールの選手がどういう風に選ばれたか知ってるかい?」
胸をときめかせていれば、ドラコが喧嘩をふっかけ始めた。
まぁ、そんな子どもなところも魅力の一つよね?
「気の毒な人が選ばれるんだよ。ポッターは両親がいないし、ウィーズリー家はお金がないし……ネビル・ロングボトム、君もチームに入るべきだね。脳みそがないから」
こらこら、ドラコ。脳みそなかったら生きてないから。心の中で突っ込んでいれば、急に観衆が湧き上がった。
何事だとグランドを見ればハリーが急降下している。周りの人間は皆立ち上がり歓声を上げた。
落ちを知っている私は全く盛り上がれない。むしろ背後で繰り広げられている、がきんちょ達の喧嘩の方が幾分か楽しめそうだ。
その時、ハリーがスネイプに向かって猛スピードで突進していた。ハリーがスネイプの耳元を掠めた瞬間、私は反射的に立ち上がっていた。
「セブルスさん!」
私の叫びは沸いた歓声に掻き消された。スネイプが地面に着地したのを確認し安堵した束の間、背中に衝撃が走り気付いた時には空中に投げ出されていた。
人生で二回目の空中ダイブ。
あれ、二回目?
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