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- ナノ -
06

抱き締められたその温もりを感じるまま、私は天に縋るように手を伸ばした。狂った声は、どこの獣の啼き声か。

ふと、悲痛な声が聴こえなくなったとき、獣が意識を手離したことを知った。


「First name」


男は酷く後悔していた。様子の可笑しかった少女に深く追及することもせず、出て行く背中を呼び止めることさえしなかった。

心に決めていた。

時が来るまでは手出しはしない。ただ少女の傍で、この愛おしい少女の隣で、行く末を傍観していよう。

せめて、少女が孤独に嘆かないように。

ただ、その所為で予想以上に早く、否、本当に早すぎるくらい早く、姿を見られてしまった。あのダンブルドアのことだ。自分が鷹と同一人物であり、誰だということなど一瞬で見抜いたに違いない。しかも、あのセブルス・スネイプもだ。

面倒なことになった。

男は自身のシャツの裾を握りしめながら寝息をたてる少女の髪を撫でた。零れた溜め息にどうか気付かないで。

泪の筋が幾つも刻まれた頬が痛々しくて、無意識に唇を頬に寄せていた。


「First name、泣かないで」


被さるように、その小さな体を包み込む。


「私がまだ生きているように、君もまたここで生きているのだから」


男は少女の温もりを確かめるように、自分の熱をも確かめていた。


「First name、共に生きよう」


堕ちた泪にもう一度口付けて、瞼を閉じた。

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