05
セブルス・スネイプがその男を見るのは二度めのことだった。一度目は、そう。少女が馬鹿な生徒を庇い気を失ったとき。何処からともなく現れた男が、腕の中にいた少女を奪った。
「貴様……」
「First nameを虐めるな」
男は少女を背に庇い、その金の瞳を細めて揺るぎなくダンブルドアを見据えている。
「其方は……」
珍しくダンブルドアが驚いている。半月眼鏡の奥にある円な瞳を瞠目させていた。
「何故……」
「疑問など私には必要ない。私に必要なのは……」
男は自分の背に縋りついていた少女と向き合い、視線を合わせるように腰を落として細い指と自身の指を絡めた。
「First name、君だけだ」
「あっ、あっ、あぁああああ」
男を完全に信頼しているのだろう。否、それ以上かもしれない。男の胸に顔を埋めて悲痛に泪を流す姿は、少女本来の姿が見えた気がした。
男は慈しむように少女を抱き抱え立ち上がる。
「いくら、貴方がたでも、First nameを傷付ける人間は、悪だ」
「……ッ、貴様!」
「セブルス、良い」
「しかし、あいつは確かに!」
「良い。まだまだ分からぬことは多い。性急過ぎたのかもしれんな」
「……」
「老いとは悲しきものじゃな、セブルスよ」
「何を……貴方はまだまだお若い」
ダンブルドアと話す間も、セブルスは少女を攫い消えた闇を睨んでいた。
この虚無感の名前をまだ知らない。
[ 93/125 ][*prev] [next#]
[目次]
[栞]