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心読みくん、喧嘩する3

私とスミレちゃんが会場に到着したころにはもうキラキラした人で埋め尽くされていた。すぐに帰りたくなった私をスミレちゃんが逃がさない。


「あ、棗くーん!流風くーん!」


二人を見つけた途端、あっさり離されたのだけれど。私は、さてどうしたものかと周りを見渡してみた。変なジンクスがあるからもう何だかみんなピンク色に見えて仕方がない。


「あ」


不意に視界に飛び込んできたのは、心読みくん。はっと開いた口はすぐに噤んでしまう。なぜなら心読みくんはセリーナ先生と仲良くお手手繋いでいたから。

一瞬交合った視線。しかし、それは心読みくんから意図的にあっさりと切られてしまった。


「……ッ」


あぁ、やっぱりこなきゃよかった。

こみ上げてくるそれに唇をぎゅっと噛み締めて、熱くなってきた目頭を両手で押さえつけた、

こんなところで泣けない。皆、楽しい雰囲気なのに。寮に戻ろう、そうしよう。


「First nameちゃん?」

「……」

「こら、無視しなーい。先生泣いちゃうぞー」


めんどくさい絡みはナル先生だ。


「髪上げてるなんて珍しいねー、似合ってるよ」


さりげなくリボンに触れたナルにびくりと後退り。


「ははっ、相変わらず警戒心強いね」


すっと細められたナルの目に、ぞくりと悪寒が走る。


「い、いや」

「First nameちゃん?」

「ひっ、あ、あっ」


あぁああああああああ!


結局は声にならない声で絶叫してしまうのであった。

不安定すぎる心は、心を覗ける君しか安定を取り戻すことなどできないのだ。


「First name」

「……ッ」

「……ごめん、ね」

「ひっ、ひっく、ふぅ」


泣きじゃくる私はあの後何処からともなく現れた心読みくんに手を引かれ会場の外へと連れ出されていた。


「ほら、もう泣かないで」

「……」

「え?だって心ちゃんがエリーナ先生と手を繋いでるからいけないんだって?」


言葉にならない声も彼は汲み取ってくれる。ただ、だだもれなだけだけど。


「あぁ、嫉妬したの?」

「だって!」

「ごめんね?First nameは僕のこと大好きだもんね」

「う」


辱めだ、これは。


「ほら、機嫌直して」


ラストダンスを踊ろう。

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