09
今井蛍、侮れぬ。勘の良い子は嫌いじゃないけど、感が良すぎる子は可愛くないなぁ。
ドッチボールコートから離れた水飲み場で子供たちの青臭い青春というやつを眺めていた。
私は変化を目の当たりにする。歪み合っていたそれが、だんだんとでも確かに混ざりあい、次第に。
「あーあ」
ほら、すっかり一つになった。
「楽しそうにしちゃって」
それをただ見ていることしかできない私は、やっぱり本当に独りぼっちだ。
「わりと好きだったんだけどな」
心配性な委員長、ツンデレスミレちゃん、隣の心読みくん、持ち上げくんに、きつね目くん。
「あはは……」
最初から分かってたでしょ。
そこは私の居場所なんかじゃない。
「Family name?」
「棗くん」
「なんで、てめぇだけ参加してねぇんだよ」
「あはは、私、病弱だから」
何言ってんだてめぇ、みたいな目をして棗くは水を飲む。
「棗」
木々がざわめいた。棗はハッとして振り向いた。現実に戻された瞬間。
「急な任務が入ってお前を探していた。来なさい」
ペルソナ。彼の声を心地良いなんて思っているのなんてきっと私だけね。
「この間のようにこっちの手をこれ以上煩わせはしないだろうね?」
あぁ、棗、君もこっちのニンゲンだ。
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