06
報告は私がすると言ってハヤテと別れた。向かうのはペルソナの部屋。静まり返った廊下は背筋が冷える。
「ペルソナ、ただいま戻りました」
控えめにノックして声を掛ければ中から物音がして、次第に足音が近付いてくる。
「……おかえり、First name」
「ただいま、零」
中へと促され、そこでようやく仮面を外した。
「ハヤテはどうした?」
「先に帰らせた。必要だった?」
「いや、怪我はないか?」
「……」
ウェストポーチから小さなケースを出して制御アクセサリーを付けていれば、そんなことを言われて思わず固まる。
「First name?」
「あ、うん。大丈夫です」
そんなこと言われたの初めてだ。嬉しさと同時に何だかくすぐったくて、ピアスを着けるのに手間取ってる振りをした。でも、それが逆に仇になった。
「貸してみろ」
「え」
彼の細い指が私の耳に伸びて、触れた。指先から感じる微かな冷たさに、反対に燃えるように体が熱をおびる。
「できたぞ」
「……ありがとう」
ピアスは付け終わったというのに、まだ耳を弄る指に俯いたまま答えれば、その指が項を撫でた。
「ひゃっ」
「First name」
あぁ、だめ。
見つめられた視線から逃れることなど、逃れる気さえ掻き消された。
「零」
吐息のように名を呼べば、首筋に口付けを落とされ、そのままベッドへと二人して崩れ落ちた。沈んだシーツに二人の汗と愛液が沁みを残す。
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