01
任務、任務任務任務任務。ここのところ任務が立て込んでいた。それはもうプライベートだけで収まらず学業を脅かすほどに。
「あ、棗くんも今帰り?」
「……あぁ」
ソファーに腰を埋めてペルソナみたいな仮面を力なく床に落とした時、ちょうど扉が開いた。月明かりの届かない扉の向こうから影のように現れたのは黒猫の仮面を付けた日向棗だった。
学園が秘密裏に危力の生徒に任務と称してやらせてることは犯罪まがいなことばかり。任務が終われば一度はここ、危力の部屋に寄るようにと言われているのだ。
「お前、今週何件だ?」
「知らない。数えてなんかいないもの」
「……」
知らない。以上に興味がなかった。今更、そんなことを数えてなんになる?自分の罪の重さを知ろって?
あはは、馬鹿みたい。
これはもう罪じゃなくて、罰でしょ?この世に生まれてしまったアリスへの。
ぼけっと天井を見つめていれば静かに扉が開き、閉まる音がした。棗が出て行ったのだろう。
「あーあ」
天井に向かって伸ばした手は真っ赤だった。
「疲れたな」
伸ばしていた手で目を覆った。その手には赤はおろか、汚れ一つついていなかった。
綺麗なまま罪を犯すことが一番汚ないなんて思って、笑った。
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