18
彼女、Family nameFirst nameと出逢った時のことを今でも鮮明に憶えている。彼女はまだ話す言葉も拙く、短い足で一生懸命大地を踏み締めているような歳だった。
彼女は僕を見ても怯えることはなかった。それどころか僕の手を必死に掴んで離そうとしなかった。まるで唯一の救いだと縋っているかのように泣きじゃくったのだった。
彼女は一歳にもならないうちに学園へと連れて来られたらしい。どういう経緯でそうなったのか僕ですら知らない。きっと知っているのは校長達ぐらいだろう。学園に連れて来られてか、彼女は他の生徒とは別に隔離されていた。そんな鳥籠の少女がまるで僕のようで、既視感を覚えた僕は無意識に、でもどうしようもなく彼女に触れたくて、気付いたら手を伸ばしいたんだ。
「First name、おいで」
僕だけを信じるように、僕だけを必要とするよに、僕だけを愛するように。そうやって僕という鳥籠にまた閉じ込めて。彼女をどろどろのぐじちゃぐちゃにしたのは僕自身だった。
束縛して僕なしでは生きれないようにして、彼女は僕が望むように成長し、僕は何も分からない彼女を抱いた。
「First name……」
彼女を外に出すという命令が下ったのは雪が降りそうなほど寒い日のことだった。下された命に僕は拳を握り締めることしかできなかった。心がどんなに嫌だと叫んでいても。
僕は不安で仕方なかったんだ。外の刺激が彼女を変えてしまわないか。外に出て僕が何て言われているか知ってしまわないか。そして、僕から離れていってしまわないか。
「いかないで、First name」
僕はそれから彼女に冷たく接した。厳しく接した。力で縛った。言葉で縛った。
彼女が僕を裏切らないように。彼女が変わらず僕だけに縛られるように。
「First name」
他の男に体を開いたと知った僕は血が登り彼女を殺そうとした。なのに、彼女ときたら気を失う寸前僕を愛してるなんて言うもんだから、今度は焦った。
そして真実を知った今、清々しい晴れやかな気分だ。
[ 19/32 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]