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17

彼が私を抱く時、私は本当の年齢の姿に戻る。つまりアリス解放。

普段はアリスを使って年齢を十歳に設定し年齢に合った姿にしている。じゃらじゃら耳に付けられているピアスと指輪、ネックレスはもう一つのアリス制御用。制御装飾着けている上に常に年齢相応な姿になるアリスを使っている私はもう一つのアリスを制御装飾着けたままでは使えずにいた。と、まぁ、こんな諸事情はどうでも良い。彼が私を抱く時アリスを解放するというところが今は重要なのだ。


「やっ、零、このまま?」

「あぁ」


なんと彼は十歳児の私をこれから抱こうとしているのだ。


「でも……」

「嫌か?」


嫌、じゃない。嫌じゃないよ。そんなわけないじゃん。

私は首を横に振った。

零は仮面を外している。そっと左目の下に刻まれた十字架を親指に撫でた。


「嫌じゃないよ」

「だったら大人しくしていろ」


零はそう言うと、長い指でゆっくりと首に巻き付いていた包帯を外しにかかった。ほとんど消えているそこを何度もなんども指先が行き来する。まるで消そうとしているみたいに。


「零?」


首に行っていた視線が上がり、私の目と交じ合う。


「大丈夫だよ」


そう言えば零の顔が泣きそうに歪む。零の目が「悪かった」そう言っている気がした。

いつもより長い口付けに、どろどろに溶け合う。口内を蠢くその感触が鳴海のものではなく彼のものだという安心感に私も夢中で絡みついた。


「ん、ふ、ふぁ、あっ」


離れた唇と唇の間に銀色の糸が紡ぐ。いっちゃヤダと唇をせがめば零はもう一度口付けしてくれた。それが嬉しくて嬉しくて、泣いた。

首筋に降り注がれる口付け。やっぱり首を締めたことを気にしているみたいで、私は彼の背中にしがみついた。気が済むまで口付けてと伝えるように。


「あの男には」

「え」

「鳴海は何処まで触れた?最期まで……」

「違う!されてない!されてないよ!やだ!信じて!私、零以外に!零以外に……」

「落ち着け、されてないなら良いんだ。ただ、あいつが触れられたところの感触を消してしまいたくて」

「零、お願い。だったら、このキスマーク消して。零がそう言うの嫌いだって知ってる。でも、嫌なの。まるで、私があいつの所有物みたいで。私は、零のものなのに……ッ」


震える唇で吐き出せば零は貪るように口付けをした。零らしくない、でも情熱的なそれに私はすぐに酔い痴れる。


「あっ」

「痛かったか?」

「んん、大丈夫」


消えかかっていた華が、また息を吹き返したかのように赤く染まった。ただ、今度は彼が咲かせたものだけど。


「First name」

「零」


あぁ、なんて幸せなんだろう。

こんな幸せ、初めてあなたに抱かれた時以来だ。

幸せを感じてる分、やってくる絶望に恐怖した。

ねぇ、目が覚めた先にあなたはいますか?

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