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首に巻かれた真っ白な包帯。それを外すと彼の手形がくっきりと残っていた。今ではそれだけが彼と私の繋がり。日に日に薄くなるそれに焦りを感じていた。
「おい」
「なんだい、岬ちゃん」
「雑草取りを手伝ってくれるのは良いが、他のものまで毟るな」
「え、あ、ごめーん」
生物担当の岬先生。何だかんだで面倒見の良い岬をFirst nameは岬ちゃん呼ばわりしていた。
「何をそんなに苛ついてるんだ?」
大きく溜息を吐いたあと、岬はFirst nameの隣にしゃがんだ。
「苛ついてる?私、苛ついてる?」
「違うのか?」
「わからない。……わからないよ!」
「Family name」
あぁ、そうだ。苛ついてる。苛々してる。だって、私が悪いの?私、悪くないよ。悪いのは全部全部全部……。
「鳴海・L・杏樹、抹殺すべし」
ゆらりと立ち上がり、鞭豆を握り締めた私はさながら戦国武将の落武者だったと後に岬ちゃんは語る。
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