×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -
10

いつの間に付けたんだ、あいつ。

鏡に映るのは真っ赤な目をした私。そして鎖骨の上に赤い跡。キスマークなんて付けられたことなかったのに、初めて付けられたのが彼じゃなくて鳴海だなんて。


「……寝よ」


私はとうとう遅刻魔から登校拒否児へと昇格した。

引きこもり生活を続けて早一週間。食事は皆が授業の間にこっそり食堂へと行っていた。おばちゃんは何も言わなかった。ほんと子どもの気持ちがわかるおばちゃんだ。


「Family nameさん?」


控えめになった扉。この声は委員長だ。きっと心配して様子を見にきてくれたのだろう。でも、きっと今の私を見たら余計心配させてしまう気がして、扉を開けることはしなかった。


「何?委員長」

「あ、Family nameさん。良かった返事してくれて。体調大丈夫?」


いつもと変わらぬ台詞。委員長は本気で私をか弱い子だと思っているのだろうか。それとも鳴海が何か言ったのか。


「大丈夫だよ。ただのサボりだから」


ベッドから出て、ひたひたと床を歩く。素足だから直に床の冷たさが伝わってくる。


「そうなの?でも、Family nameさん遅刻する時とかいつも辛そうな顔してるから」

「え」


そんな顔してた?私、そんなにバレてしまうぐらい顔に出してた?


「みんなも心配してるよ?」


そっと扉に手を当てれば、なんだか委員長の温かさが伝わってきてる気がした。


「あはは、嘘」

「嘘じゃないよ!心読みくんもつまらなそうにしてるよ。きっと隣の席が空いちゃってるからだよ。あの棗くんだって心配してるんだ。今日、ナル先生に『Family nameはどうした』って詰め寄ってたし!」

「そっか、心読みくんが、棗くんが……」


何だか二人の顔が想像できて思わず笑みが零れた。

人に心配されるなんて慣れてないから、なんだかくすぐったいや。


「Family nameさん」

「委員長、ありがとう。大丈夫、明日は行くよ」

「え、本当?」

「うん」

「そっか……そっか!待ってるね!」


軽い足音が離れていく音を聞こえなくなるまで、その場で聞いていた。


「あーあ、一番心配して欲しい人はきっと何とも思ってないんだろうな」


自嘲めいた言葉など誰も聞いてはくれない。大きな独り言が静かに響いたのだった。

[ 11/32 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]