09
幸せなんて感じたことないわ。
だって、あなたは私を抱いている時だって、私じゃないあの子を思っているのでしょう?
だって、あなたは私を抱いたあとすぐにシャワーを浴びていなくなっちゃうじゃない。一緒に眠ったことなんてないわ。
だって、あなたは、私を愛してなどいないから。
「ひっ、ひっく、ふ、うっ、うぅううう」
それでも図書室を飛び出した後、私が向かったのは彼のいる部屋。止まらない泪を流したまま、会いたくて会いたくて会いたくて、傷付くと分かっていながらも彼を求めてしまったんだ。
「のばら」
「ペルソナ」
あぁ、ほら、馬鹿じゃないの?馬鹿でしょう。
彼のあんな優しげな声を聞いたことがあった?彼にあんなに優しい声で名前を呼ばれたことがあった?
ないでしょ?
それが、私とあの子の違い。
愛されているか、愛されていないか。
求められているか、いないか。
必要とされているか、いないか。
あぁ、もう、ほんと……。
「馬鹿みたい」
空気を震わせたそれは誰にも届かない独りの嘆き。
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