13
風が私の背中を押してくれる。風に乗る、言葉通り私は一瞬にしてレッドの背を取った。
そのまま蹴りを入れる。風のおかげで力のない私の蹴りにも重みが出る。
「……!?」
前に倒れていくレッドは踏み止まり、そのまま体制を取り直して私と向きあう。
「……」
「レッド、甘くみてると痛い目みるよい」
マルコの言葉に皆の興奮も爆発し、私とレッドの白熱した戦いが始まった。
「いってー。え、何?また気絶?一年修行してまた気絶?」
目が覚めたら、まだ皆宴の続きをしている最中だった。私は甲板の端っこに転がされ、隣には片膝を立てて煙草を片手にちびちび酒を飲んでいるレッドがいた。
悔しくて悔しくてバンダナを外して目元を覆った。
「ばーか。一年前とじゃ俺の本気の出し具合が全然違ぇっての」
「……」
「First name、強くなったじゃねぇか」
頭を撫でられる手が優しくて唇を噛み締めて漏れそうになる嗚咽を堪えた。
「うー、あー、もう!酒飲むぞぉおおおお!」
次の日、激しい頭痛にやけ酒なんて二度としないと心に堅く誓った。
「あー、痛い痛い痛い」
「二日酔いか?First name」
「おはよーございます、サッチ隊長。申し訳ないんですが何か軽い物お願いします」
「お任せを」
温かい紅茶を置いて、リーゼントを揺らしながら厨房に戻って行くサッチの背中をズキズキする頭を抱えながら目で追った。
「うぃーっす」
「あ、赤緑黄、おはよ」
声を揃えて食堂に入ってきた赤黄緑。いつもなら略すなよと突っ込まれるところだが隣にぐたぁと座った様子からみると、どうやら三人も二日酔いらしい。[ 93/350 ][*prev] [next#]
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