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もう、マルコはすぐに殴るんだから。こう見えて私は女だぞ。だから三十路過ぎても結婚できないんだ。とブツブツ言っていたら、もう一発くらった。
「船長、一番隊First name。只今武者修行から戻りました」
さっきまでと打って変わって頭を下げた私に目ん玉ひん剥いて驚く三人にニヤリと笑う。
「グララララ、一年間ご苦労だったなぁ。で、風に乗れるようになったのか?」
私は一年間マルコを師匠として何人かの兄弟たちと一緒に修行の旅に出ていた。ちなみにマルコは師匠と言っても一番隊隊長で、白ひげの右腕的な存在だからちょくちょくモビーに帰って来ていた。
悪魔の実を食べてから、どうにか力をコントロールしようとしたが私がこっちの世界の住人じゃないからか全く能力を使いこなすことができず一年前、船を離れて集中して修行することになったのだ。
まもなく到着した船の皆と合流した後、お決まりの宴が始まった。
「First nameー!飲んでるかー!?」
酔っ払いイエローに絡まれた。酒臭くて若干体を引いた。
「飲んでまーす。イエローさん臭いでーす」
軽く風を起こして私の周りの臭い空気を飛ばす。
「一年間、俺に会えなくて寂しかっただろー?」
「全然」
「うわぁああああん!グリーン!First nameが冷たい!」
イエローは酔っ払うと絡むし泣くしめんどくさい。よしよし、と介抱するグリーンは偉いと思う。
「で、First name。能力は扱えるようになったのか?」
「試してみるかい?レッドくん」
勢い良く立ち上がりグラスに残った酒をグイっと飲み干す。レッドは「仕方ねぇなー」とか言いながらヤル気満々で腕捲りをした。
「ナイフ無しね」
「素手だってお前なんかに負けやしねぇよ」
「あ、でも私は能力あり」
「相変わらずずりーな」
「だって見たいでしょ?」
お互い構えながら言い合っていると周りが何だ何だと騒ぎ始めた。
「えー、あー、ゴホン。只今よりレッドVSFirst nameちゃんの勝負が始まりまーす!」
グリーンが酒瓶マイクに司会を始めた。その言葉に皆が囃し立て、私とレッドの周りに人がいなくなった。
「かかってこいよ」
余裕綽々として言うレッドのお言葉に甘えて足を踏み切った。[ 92/350 ][*prev] [next#]
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