01
視界が反転した。ぎゅっと目を瞑った直後背中に感じたのは柔らかい感覚。それが逆に背筋に悪寒を走らせた。
「痛い、マルコ隊長」
「お前分かってんのか?」
「……」
「戦闘員になったら今のと比べ物にならねぇくらい痛い思いをするかもしれねぇんだよい」
きつい口調から、いつもの柔らかい言葉使いに戻ったマルコの瞳は歪んでいた。それは、きっと私を心配している瞳。
心配してくれているのは正直嬉しい。だけど……。
「マルコ、分かってる。マルコから言わせたら私の分かってるなんて全然分かってないのと一緒かもしれないけど……。私がこの船に乗せてもらっている以上、海の上にいる以上……」
この世界にいる以上。
「私は私自身を護る術を身につけないといけないと思う」
「俺たちがいるよい。お前がそんなことしなくても、俺たちがお前を……」
「マルコ」
マルコの言葉を遮る。護るなんて言わせない。
「マルコ隊長が私に戦うなというなら、私はこの船を下りる」
いくらこの船があの白ひげ海賊団だといっても、強者たちが集まっているからといっても、自分に身の危険がないわけがない。
私はこの世界にきてすぐ、間近で命の灯火が消えるのを目の当たりにした。それがこの世界の現実。海賊船にいるなら、どこかの島に下ろしてもらった方が私のためにも白ひげ海賊団のためにも良いことぐらい分かる。[ 61/350 ][*prev] [next#]
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