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「お酒、強いじゃないですか」

「え、あー……」


私は頬杖付いたまま、ぼんやりとバーテンのグラスを拭く手を眺めていた。

チラッとバーテンを見て今度は自分の手の中のグラスに視線を移す。カランと氷の涼しげな音が鳴れば私はグラスの中身を飲み干した。


「おかわり」


空になったグラスをバーテンに押し出し、ゲラゲラと騒がしい笑い声と耳障りな高い声のする方へ体ごと向きを変えた。


「別に弱くはないんですよ」

「はい?」

「お酒」

「あぁ」


すっと音もなく目の前に置かれたグラスに手を添える。


「ただ限界を知らないから」

「……」

「どこまで飲めば自分が自分じゃなくなるか分からないから」

「……」

「そんな無様な姿なんか誰にも見られたくない」

「……そうですか」

「ん」


サッチめ、鼻の下伸ばしてデレデレしやがって。マルコの奴、顔近いだろ。んなに、おねーさんの首筋匂い嗅いで何が楽しいんだ。てか卑猥だ。ものすごく手つきやら何やら卑猥だ。もーラブホでも逝きやがれ。

まだ慣れないこの世界に取り残されたようで、本当はまだ夢を見ているのではないかと疑いたくなる。

でもバーテンが作ってくれたお酒は本当に美味しくて、喉が燃えるこの感覚が現実だと教えてくれた。


「ねぇ、おにーさん?」

「へ?」

「おにーさんも白ひげでしょ?さっき一番隊隊長さんと入ってきたもん」


なんだか馬鹿な女に捕まってしまった模様です。ちらっとバーテンを盗み見れば苦笑しながらグラスを拭き続けている。

あー、良かった。バーテンさんは私の性別を分かってくれていたみたい。


「おにーさんてばー」


さて、この馬鹿女をいかが致しましょう。


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