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「マルコ隊長、サッチ隊長お待たせしましたー」
「遅ぇよ、い?」
「First name……ちゃん?」
「いやー、長らくお待たせ致しました。ほんとすいません」
あれ?サッチの顔がムンクに……。
「First nameちゃん!なぜ!?どうして!?そんなっ!」
「お前、耳穴だらけだったのかよい」
「うん、両耳合わせて七つかな?」
「それにしても凄いイメチェンだなぁ」
「海賊に長い髪は邪魔なだけだから切っちゃっいました」
いつの間にか空がオレンジ色に変わっていた。この世界は夕日も綺麗だな。
「そろそろ帰るか。あと二、三日は停泊する予定だから他に足りないものがあったらまた買いにくれば良いだろい」
「はい。今日は、ありがとうございました」
「そうか!失恋かっ!」
『は?』
今まで気配すら絶っていたサッチが何やら理解し難い言葉を発した。
「First nameちゃん!失恋したんだな!?」
何言ってるんだこいつと憐れみの眼差しをマルコと二人で投げた。
「誰だ!?First nameをフッた馬鹿な奴は誰なんだ!?」
誰って誰もいな……あ、いた。
「白ひげ」
「え?」
ぽかんとするサッチと額を押さえてやれやれって感じのマルコ。
「だから白ひげにフラれました」
あれはショックだった、うん。
「お、親父?」
「はい」
ガクッとサッチの肩が下がり何やらぶつぶつ呟きながら負のオーラを背負って船の方へ歩き始めた。
「どうしたんすかね?」
「聞いてやるなよい」
首を傾げサッチの背を指さした私の頭をポンポンと叩きマルコも歩き始めた。
その後ろを私は、ニヤニヤしながら着いて行った。
私はそんな馬鹿な女じゃない、普通の女ですから。[ 36/350 ][*prev] [next#]
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