02
またね、と言った。あの子は、またねって。
「う、あっ」
ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。こんな、こんなどうしようもない、どうしようもない、私を……母を、許さないで。
「落ち着け、息をしろ」
「や、だぁ!」
息なんて、生きなんて、したくない!
「あの子がぁ!あの子がいない!なんで!どうして!どうして私は」
戻ってきちゃったの!?
「……ッ、馬鹿野郎!」
ドクターの怒鳴る声にFirst nameは、びくりと肩を竦ませた。ただ目は腕で覆われたままだ。
「ふざけんじゃねぇ!お前が悪い!俺は言ったぞ!親父だって!マルコ隊長だって!みんな、みんなだ!」
「……ッ」
「それでもお前は行くと……ッ、言っただじゃねぇか!俺らはどんなにお前を止めたくて止めたくて止めたくて、どんな気持ちでお前の背を手離したと思ってんだ!」
お前が海賊だからだろう!?
「……ッ、う、あ、ごめ、なさ、ごめんなさい!」
誰に対する謝罪か。逝ってしまったあの子へか、生を知らせもせず逝かせてしまった彼へか、私を思って、それでも目を伏せてくれた家族へか。
否、全部だ。
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
でも!
「……」
私は視界を覆っていた腕をそっと解いた。目が眩むほどの光が射した。神の後光のように。
「私は、エースを助けたかった」
覚醒してから、初めてちゃんと目を開いて言った。その言葉こそが真理であり事実である。
「……」
ドクターは何も言わなかった。それでも全てを分かっているかのように目を閉じた。
「ねぇ、教えて、ドクター。私は、私は」
エースを救えた?[ 344/350 ][*prev] [next#]
[目次]
[栞]