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- ナノ -
01

「いかないで!」


自分の叫ぶ声で目が覚めた。滲む視界、その先に見えたのは手だ。誰の手だ。

あぁ、私の手だ。


「First name!目が覚めたか!?」


カーテンを勢い良く引いてベッドサイドに近付いた男はドクターだ。何度も覚えのある状況。ただ、First nameは小刻みに震える指先から視線を離すことができなかった。

その先には何もない。何もないんだ。


「First name!しっかりしろ!First name!」

「あ、ぅあ、あっ、ドク、タァ」


自分の声がやけに篭って聞こえる。顔に纏わり付くような息苦しさを感じるものの、今はそんなこと気にも止められなかった。

First nameは酸素マスクを付けられ、胸には心臓の波形を表すモニター、腕には点滴、他にも用途不明な管が繋がれていた。


「あ、あたし、ヒトを、コロした」

「First name?」

「ヒトを、人を!何よりも大切で!私が一番護らなきゃいけなかった!ごほっ、ごほっ!命を!……ッ、う」

「First name、お前……」


ドクターは目にも当てられなかった。この少女は、否、この女はもうきっと、確実に、自分の子が、自分の中にいないことを知っているんだ。


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