18
「ママ、ママー、おきて」
「……ん」
ここはどこだろう。真っ白な世界だ。
「あ、ママ起きた?」
「……僕くん?」
「そう、僕はママの僕くんだよ」
「ここは」
あぁ、私死んじゃったんだ。
じゃあ、僕くんも。
「ごめんね」
「もう!ママほんと無茶ばかりするんだから!そんなんだからパパに怒られるんだよ!」
「あはは」
「それにおじいちゃんだって泣いてたよ。ママのお友達の三人だって、ママが助けた人だって、マルコ隊長だって、みんな、みーんなだよ!」
両手を大きく広げて表した僕くんにくすりと笑う。
「パパも」
「え」
「パパもずっとママの名前呼んでるよ」
「……」
「パパが泣いてる、ママが側にいなきゃパパ泣き止まないよ」
「……」
「ほら、聴こえるでしょ?パパの呼ぶ声」
僕くんが目をつむり耳を澄ませる仕草をする。それに倣って目を閉じた。
「First name!First name!死ぬな!First name!First name!俺を置いて逝くな!」
「……ッ、クロコダイルさん!」
「ねぇ、ママもう無茶しない?」
「え」
「しないなら、ママ帰りなよ」
「何を」
「ママを待ってる人がいるんだよ。ママはまだこっちにはきちゃだめ」
伸ばした指先は空をきる。
ビデオが巻き戻しされるかのように僕くんとの距離が開く。
「僕くん!僕くんも!一緒に!」
「ごめんね、ママ僕は一緒にいけないんだ。でもね」
また会えるよ。
「だから、許してあげる。また会おう。それまで、バイバイ、ママ」
次こそは僕のことちゃんと抱き締めてね。[ 342/350 ][*prev] [next#]
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