14
エースと麦わらのルフィ、ほら、見てよナナちゃん、名シーンだよ。兄弟が背を預けあって闘うシーン。ほら、ようやく出番だ。
「白ひげ」
私は風を纏いながら白ひげに声を掛けた。
「First name?」
「私は迷い子、今日この日この時のために私はこの世界で生きてきたんだと思うんだ。あははは、それに気付いたのも今だけど。……ねぇ」
この子のおじいちゃんになってくれるんでしょ?
「グラララララ!お前はほんと」
自慢の娘だ。
ありがとう。
「白ひげ、一つだけお願い」
「……」
「生きて」
エースは私が助けるから。
「First name」
白ひげは、風になった少女の、否、女の背に不安を覚えた。たが、風になってしまった娘を捕まえる術を白ひげは持ちあわせてはいなかった。
この世界はもう紙の上の世界なんかじゃない。この後の流れ?そんなの知ったことじゃない。私にはみんなが、家族のみんなが笑って生きてる。それだけで十分だから。
「ゴフッ……ッ」
「貴様」
そう、この瞬間を待ちわびていたの。このページを破り捨てたかったの。
ルフィと赤犬の間に入るエース。そして、現実はエースと赤犬の間に、私だ。ナナちゃん、ほら、未来を変えてみせたよ。
「First name!」
「First nameちゃん!」
「うぁあああああ!」
失われた物語。そして新たに紡がれる物語。それがあれば私は十分。
あぁ、でも、最期にもう一度貴方の姿を……。[ 338/350 ][*prev] [next#]
[目次]
[栞]