13
怖い、怖い、怖い、でも私はもう知ってる。本当に怖いものが何か、を。
「白ひげを殺させはしない!」
「小娘が」
赤犬から目を逸らさない。今逸らしたらその瞬間、私は殺される。
「あ、First nameに!First nameに、続け!」
「親父を護れ!」
白ひげ海賊団の仲間が、我に返ったかのように白ひげの周囲を固める。
「来るな!」
白ひげの怒号に仲間の足が止まる。
「First name、退いてろ」
白ひげの大きくて大きすぎる手が肩に触れた。
「おれぁ『白ひげ』だぁあああ!」
白ひげの背は家族が護る。私は。
「エース」
ようやく、弟と目が合った。まだ遠いエースが私の名を呼んだ気がした。
「今、助けるから」
振り上げられた斬首刀。私はそれが届かないことを知ってる。
「やめろぉおおおおお!」
ほら、腹の底から込み上げてくるゾクゾクとした感覚。覇王色の覇気だ。
「First name!」
レッドが兎少年を抱えて側へ。今の覇気で意識を飛ばしてしまったのだろう。
「無事か?」
いつになく真剣な顔のイエロー。もしかしたら怯えているのかもしれない。
「イエロー」
「First name?」
「今は見ていれば良い」
機会は与えられているのだから。[ 337/350 ][*prev] [next#]
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