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07

戦場を翔ければ白ひげ海賊団の皆がギョッとしたように私を振り返った。そして口々に私の身の心配をしてくれる。私は良い兄弟を家族を持った。


「おい、トリオ!しっかりFirst nameを護れよ!」

「First name!ふらふら飛ぶんじゃねぇぞ!」

「お前!子は大丈夫かよ!」


大丈夫と笑って私は風を巻き起こす。


「おい!レッド見ろよ!あれ、海賊女帝ハンコックだぜ!うっひょぉおおお!」

「こら!イエロー、そんな場合じゃないだろ!」


鼻の下を伸ばすイエローを私の代わりにグリーンがど突いてくれた。


「あ」


粉塵の中で彼を見つけた。


「あぁあああ!ちょっとジョズ隊長なんてことを!」


余所見をして駆け出した私は、三人と離れてしまったことに気づかなかった。


「余計なマネすんじゃねぇよ。殺されてぇか?」

「口の悪ぃ奴だ。フフ、どうだ、俺と手を組まねぇか?」

「ジョズ隊長!って、うわっ!ドフラミンゴがいる!イケメン!」

「First name!?逃げろ!」


ジョズ・ダイヤモンド隊長が目を見開き、私に逃げろと叫ぶ。


「あぁ、そんな場合じゃなかった。ちょっと、ジョズ隊長!クロコダイルさんの顔をよくも傷付けてくれたな!あとでダイヤモンド貰いますからね!」

「……なんだぁ、お前。何者だ?」


ドフラミンゴのサングラスがFirst nameを捕らえた。口元は三日月のように笑ってはいるが、サングラスの奥の目ははたしてどうだろうか。自然とFirst nameの顔が引き締まる。

この世界に来てそれなりに修羅場を抜けてきた。そのFirst nameの直感が今、けたたましく警報音を鳴らしている。


「First name。……白ひげの、娘です」

「フッフッフッ。あぁ、『風来のFirst name』か。まさか娘だったとはなぁ。なんだ良い女じゃねぇか」


ドフラミンゴはジョズ隊長の背から一瞬にして私の正面に降り立った。私はいとも簡単にドフラミンゴの手中に入れさせられてしまった。

ドフラミンゴの巨体で陰る。その所為か、余計にドフラミンゴの存在が、気配が大きく、強く重くのし掛かる。ピンクのフワフワは少しも緩和などしてくれなかった。


「ちょっ、ちょっと、ドフラミンゴさん。近い、ですけど」

「フフフ、取って喰ってやろうか?」


ゾッとした。

とっさに身を引こうとするも、ぴくりとも動かなかった。そこで漸く気付く。

くそっ、いつの間に。

すでに私はドフラミンゴの悪魔の実の能力で捕らえられてしまっていたのだ。睨み上げればそれはドフラミンゴを喜ばせるだけ。より深まった三日月の笑みに、ようやく焦りと恐怖を思い出す。

ドフラミンゴの手が私に向かって伸ばされた。


「First name!……ッ、ドフラミンゴ!First nameに手を出すな!」


ジョズ隊長が叫ぶ。


「……ッ」


ドフラミンゴの指先が頬に触れる瞬間……。


「触るんじゃねぇよ」


砂の香りがした。


「クロコ、ダイル、さん」

「てめぇ、俺の言ったこと忘れたのか?」

「え」


俺以外の男に触らせてんじゃねぇよ。


「クロコダイルさん……ッ」


あぁ、良かった。クロコダイルの目に私が映ってる。


「おかえり、なさ……ッ」

「……あぁ」


ぎゅっと、彼の腕に顔を埋めれば、ずっと求めていた彼の香りが私を包み込んでくれた。


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