05
「ダメですよ、クロコダイルさん」
正義は光とともに空からは降ってくる。麦わらのルフィは相変わらずらしい。そして、彼も。
「おわっと!」
「エースの弟、見せ場を奪ってごめんよ。でも……親を助けるのは子の役目だから、許せ」
白ひげ、クロコダイル、そしてルフィ。その空間に私。畏れ多いにもほどがある。
「お前は!」
「やぁ、エースの弟久しぶり。白ひげ、大丈夫ですか?」
「生意気言ってんじゃねぇ、First name。おい、トリオ。First nameをフラフラ飛ばすなと言っただろうが」
「オヤジ!悪ぃ。First name、よりによってだなぁ!」
「はいはい、レッド。なんだか、最近レッドってばマルコみたい」
まったく、保護者はこれ以上いらないよ。
白ひげに向けられたクロコダイルの攻撃。本来ならばルフィが間に入ったのだけれども、砂の影を見た瞬間、体が、ううん、心も、止められなかった。
「さて、あっちはどうするよ」
イエローが拳を鳴らした。グリーンもいつの間にか身の丈ほどの銃を傍らに。そしてレッドが私を庇うように立ちはだかる。
そんな必要ないのに。
「クロコダイルさん」
「……」
クロコダイルとFirst nameの視線が交錯する。そして……。
「え」
クロコダイルは視線を逸らし、そのまま砂と化した。消えて行く砂塵にFirst nameは無意識に手を伸ばしていた。
「First nameちゃん?」
「……ううん、何でもない」
麦わらのルフィはモビーから降り戦場へと飛び出して行った。入れ替わりにマルコが戻る。
「オヤジ!海兵達に入った通信でエースの処刑を早めるって情報が!」
「あぁ、聞いた。だが、冷静になれ。そうやって漏れた情報で俺たちが焦る事も計画のうちだ。うっかり作戦を聞かれるなんてヘマ……あいつはやらねぇ。そういう男だ!」
First nameは戦場を見下ろした。消えた彼の姿を探してもこの戦場じゃ見つけられるはずもない。でも、ずっと遠くにいた彼がこの何処かにいる。ただそれだけで、どうしてこんなにも泣きそうになるのだろうか。
First nameは、もはや隠しきれないぐらい膨らんだ腹をそっと撫でた。
気付いただろうか、否、気付かなっただろうな。
「さぁて、行こっかな!」
「おい、First name!待っ……ッ!トリオ!First nameを追え!」
モビーから飛び降りた。自ら、そこへ、戦場へ向かって。マルコに抱えられて絶叫していた時の私はもういない。自ら飛び出す力を持ち、勇気を得た。
「エース!今、行く!」
風に乗って届いただろうか。
急に飛び出したFirst nameにマルコが叫び、レッド、イエロー、グリーンが慌てて飛び降り、その背中を白ひげが目を細めて見送った。[ 329/350 ][*prev] [next#]
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