02
「ほい、お待たせ」
「ありがとうございまーす。サッチ隊長」
食堂で温かいホットチョコレートを作ってもらった。こくりと喉を通れば、不思議なことに震えていた筈の手がぴたたりと止まった。じんわりと侵食するかのように温かさが広がる。
「おいし」
「だろう?俺様の愛がたっぷ……」
「First name!やっと出てきたか!」
「First nameちゃん!あ、ホットチョコレートいいなー!サッチ隊長、僕もー!」
「おい、First name!お前なぁ、あんまり心配かけんなよ、この野郎」
「ちょ!イエロー!溢れる溢れる」
ヘッドロックかましてきたイエローの腕をギブギブとタップする。
「サッチ隊長、俺きっつい酒頼みまーす」
「レッドお前なぁ」
「燃料補給っすよ」
呆れたようにレッドを見たサッチ。しかし「わかったよ」とキッチンへ戻って行った。
「まぁまぁ、君たちも座りなよ」
「言われなくてもな」
「僕、First nameちゃんの隣」
正面にどかりと座ったイエロー。右隣にはグリーン、そして左にはレッドだ。
「ねぇ、First nameちゃん僕くんどう?」
「んー、今寝てそう」
「なーんだ」
「これから寝てられなくなるからね」
残念と目を瞑ったグリーンに苦笑しながらお腹を撫でる。
「お前、ドクターのところに大人しくいろよ」
「えぇぇ、またその話?」
First nameにはドクターストップが掛けられた。そりゃそうだ。どこの世界に妊婦が我それと戦争に飛び出し奴がいる。まぁ、ここにいるんだけど。
「オヤジからも言われただろ」
「……」
珍しくイエローが真面目な顔で言ってきた。
そう、白ひげにも言われた。白ひげは私をどこか遠くの島へ置いて来ようとしたぐらいだ。でも、それを私は拒んだ。それこそ、一触即発な親子喧嘩である。マルコだけでなく、他隊の隊長まで総出で喧嘩の仲裁だ。ほんとこんな時に何してるんだろう。まぁ、最後はあの白ひげが折れたのだけど。
「まぁ、ほどほどにしとくよ」
ニヤリと笑った私に三人はこりゃ駄目だと溜息を吐いたのだった。
「あ、First nameさん。見つけた!」
「アイちゃん。アイちゃんはナースたちのそば離れちゃ駄目だからね」
「分かってますって、もー」
「お、アイも何か飲むか?」
「お願いしまーす」
アイちゃんも私同様に周りから何度も同じことを言われて耳にタコ状態らしい。ちょうどキッチンからつまみと酒を持ってきたサッチが出てきた。
こんな日常会話の中も、モビーディック号は着実に海軍本部へと近付いていた。[ 326/350 ][*prev] [next#]
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