01
エース処刑まで、残り三時間。
指先が冷たい。先ほどから小刻みに震える指をFirst nameはジッと見つめていた。とうとうこの日が来たのだ。あぁ、震えが止まらない。月日が私を強くしたはずなのに、こんなにも怖いのはまだ私が弱いからか。
「First name、怖いかい?」
ハッとして顔を挙げれば、そこにはマルコがいた。まるで私の心の中を読んだようだ。
「マルコ……」
「隊長だろい」
「……マルコ隊長」
いつもの掛け合いに、唇が緩むもまだ面持ちは堅いままである。
「おめぇは強くなったな」
「え」
マルコは正面でしゃがみ込み、いつだって温かい手を私の頭の上に置いた。
「怖がりが強い奴じゃねえのは、まぁ、確かだが、俺は恐怖を忘れちまった奴こそが弱者だと思う。お前は強くなったよい。怖くて縮こまっていた頃が可愛いぐらいな」
「なにそれ」
「ほら、レッドたちが心配してたぜ。部屋にこもって出てこねぇってよ」
「ねぇ、マルコ隊長」
「ん?」
「サッチ隊長、ホットチョコレート作ってくれるかな?」
「……あぁ、喜んで作るだろうよい」
肩が並んだ。マルコの背中に隠ればかりいた頃の私じゃない。今はこの大きな人の隣に立って戦うことができる。私の、皆の大切なものを護るために。
エース、今姉ちゃんが助けに行ってやるからな。
前を向いた。[ 325/350 ][*prev] [next#]
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