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大きなコアラとサイとシマウマが一瞬にして吹っ飛ばされた。なんだかウサウサの実の能力者な僕からしてみたら複雑な気分である。動物虐待なんて言葉が頭に浮かんだけれどクロコダイルの顔を見たらそれさえも一瞬で吹っ飛んだ。


「えへへ」

「ヘラヘラしてんじゃねぇ」


クロコダイル。意外と怖くない人である。容赦なく看守らをやっつけているけど、それはまぁ、うん僕もだし。それよりクロコダイルがさっき解放したミスターワンって人の方が怖いな。スパスパの実の能力者で身体を刃物に変えてスッパスッパ切ってる。いつか僕の耳もスパッとやられちゃうんじゃないかなんて心配だ。

レベル3まであと少しだってところで獄卒長のサディちゃんの登場だ。奇抜なファッションにちょっと目のやり場が困る。なんて思っていたら、我らがイワンコフ殿も女の気分らしく、こちらも目のやり場が……。

女と女の凄まじい戦いに後ろ髪引かれながらも僕はクロコダイルの後を追う。


「ここが地獄の大砦!何人たりとも通さんぞー!!」

「うわっ」


薙刀の風圧で尻餅をついた。副署長のハンニャバルだ。小物の僕なんてあっという間にやられてしまう。僕は慌てて立ち上がって物陰で縮こまる。耳が弱々しく垂れ下がってしまった。


「は、ハンニャバル副署長!」

「もう立たないで、死んじまいます!」

「何を、貴様ら、シャバで悪名揚げただけの『海賊』に『謀反人』!何が兄貴を助けるだ!社会のゴミが綺麗事ぬかすな!貴様らが海で存在してるだけで!庶民は愛する者を失う恐怖で夜も眠れない!か弱き人々にご安心頂く為に凶悪な犯罪者達を閉じ込めておくここは地獄の大砦!それが破れちゃこの世は恐怖のドン底じゃろうがぃ!出さんと言ったら一歩も出さん!」

「おれはエースの命が大事だ!だからどけ!」


正義と正義のぶつかり合い。それは悪と悪のぶつかり合い、なのかもしれない。僕には難しいことはよく分からないけど、どちらも何か大切なものを護るために必死なんだってことだけは分かった。それでも顔を挙げれないのは、僕がそんな彼らと対等な舞台に登るには値しなきゃ小物だからだ。


「やめときな」


僕の兎耳が声を拾った。それは恐ろしくも真っ黒で深い闇の声だ。恐ろしくて恐ろしくて尻尾が、ふるふると小刻みに震えだす。


「正義だ、悪だと口にするのは!この世のどこを探しても」


答えはねぇだろ。

それでも、人は、人間は、正義と悪を区別しなければ、生きてはいけないんだ。

どこかの誰かが滑稽だと嘲笑った。


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