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増える脱獄囚に倒れていく脱獄囚、数は増えているのか減っているのか、そんなこと考えるのは無駄だ。ただ前へ、上へ、外の世界へ。
「うわっ!」
高い声の悲鳴に振り返れば兎少年が倒れていた。そこにすかさず看守らが襲い来る。クロコダイルは舌打ちしつつも、看守らに乾きを与えた。
「え、あ、ありがとう」
「立て、止まるな」
「うん!」
嬉しそうに笑うそれに何故だかあいつを重ねた。
「何ですか、こいつ」
真っ白な少年の兎耳を見下ろしているのは先ほど牢から出てきたミスター・ワン。腹筋に刻まれた『壱』の文字。
「く、クロコダイル、こちらは?」
「気にすんな、行くぞ」
怯えたようにミスター・ワンを見上げている兎少年の頭を押し潰すように撫で、先を促した。立ち止まっている暇などない。
「レベル4に早く援軍を!」
「レベル2にも援軍を!」
「ダメです!止まりません!」
「……!失踪前の凶暴だった囚人たちが何か画期的な格好をしており!」
「色んな意味で止まりません!」
もう前に進むだけだ。[ 320/350 ][*prev] [next#]
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