09
「エース!」
そうだ、こいつの所為だ。こいつの所為で俺の計画は狂った。こいつの所為で、こいつの所為で……否、俺自身の所為、か。
あいつは今どうしているだろうか。あの後、白ひげのところへ帰ったのだろうか。癪だが、そうしていれば良いと思う。あいつは地に足が着いているように見えて、風のようにすり抜けていってしまうような危うい奴だから。
あいつにとって火拳は兄か、それとも弟かどちらなんだろうな。家族といるあいつはどんな顔で笑っているんだろうか。
俺は、あいつに……。
浮かんだのは、悲しそうな顔や泣き顔、苦しそうな顔、辛そうな微笑。
あんな顔しかさせられなかった。
「いねぇぞ!」
「この檻で間違いないんでしょうね!?」
「あ、ありません!間違いありばぜん!」
「一歩遅かった様だ!」
白ひげは来るだろう。息子を助けに。あの男はそういう男だ。たった一人の家族のために、ためならば、どこにだって現れる。
「お前さん『麦わらルフィ』だな!?」
「!?あぁ」
「今しがただ!すぐ追え!!エースさんはリフトで連行された!」
「……おっさん誰……」
「急げばまだ間に合う!行け!!!」
「……そうか!ありがとう!!誰だか知んねぇけど!」
ジンベエの必死の声に走り出す。あぁなったらあれは止まらねぇ。それをクロコダイル自身がよく知っていた。
きっと、あれはあの時みたいに救ってしまうのだろうな。純粋に、真っ直ぐに、自分の意志で。
クロコダイルは光もないそこで眩しげに目を細めた。
あれに付いて行けば……。
「エースボーイの身柄はもう『海軍本部』へ渡ってしまう。諦めるんだね、いえ後は『白ひげ』賭けるしか……」
「だったら」
クロコダイルの口角が上がる。
「おれ行くよ、『海軍本部』」
そう言うと思った。お前はそういう男だ。
「ヴァカおっしゃい!この世界の頂点の戦キャブルよ!!?『白ひげ』の実力知ってんの!?迎え撃つ海軍の『大将』『中将』『七武海』の実力知ってんの!?ヴァナタ命いくつ持ってんの!?」
「もし諦めたら悔いが残る!おれは行く!!」
ゆらりとクロコダイルは立ち上がった。少し眩暈がするのは久しぶりに立ち上がるからか、はたまたこれからの期待に対する高鳴りの所為か。
あぁ、どっちにしろ俺もあれと同じ馬鹿な男だ。
「ここをぬけたきゃ俺を解放しろ。俺ならこの天井に穴を開けられる。どうだ?麦わら」
「お前!?ここに捕まってたのか!」
振り向いたあれは、麦わらの男は相変わらず嫌な目をしている。
「クロコダイル!!」
「クハハハハ!」
今、会いに行く、First name。[ 316/350 ][*prev] [next#]
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