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07

誰かのためだなんて誰かの所為にして、自らの命を捨てるような馬鹿がクロコダイルは嫌いだった。誰かのために、その誰かにされた誰かは自らの所為で死んでいった者を目前に何を想えばいい。誰を責めればいい。

それは誰かのためにだなんて言うんじゃねぇ、自分のために誰かを言い訳に自殺してんだ。


「そうやってあの人は色んな島をその名前で守っとる。海賊のボスだから打ち倒せばいいってもんじゃないでしょうが……っ」


ジンベイの言葉にクロコダイルの脳裏に浮かぶ一人の男。むかつぐらい豪快に笑う男だ。次いで浮かんだのはあいつの顔。

泣いた顔だった。何か言いたげだった。あの時、手を伸ばせふれられた。でもそれをしなかったのはあいつのためなんかじゃなくて俺自身のためだ。


「わしは死んでもこの戦いを止めたかった!あんたを、救い出したかった!」


あぁ、きっとあいつなら今の言葉に腹を立てただろうよ。あいつも、そういうのが嫌いな奴だ。そのくせ一番あいつがそういう奴だったが。

クロコダイルは可笑しくなった。


「ジンベエ、もうよしてくれ……ッ、辛ぇだけだ!」

「まだ希望は捨てておらん、『奇跡』と『チャンス』を……わしは信じている!」

「……ッ!」


あぁ、本当クソだな。


「クッ、クハハハ、シャバはずいぶん面白ぇことになってる様だな。ククククッ」


クロコダイルは心底可笑しそうに、且つ底冷えするような笑い声を漏らした。


「『白ひげ』を討ち取るにゃあまたとねぇ好機ってわけか。こりゃあ流石に血が騒ぐ」

「……貴様!」


ジンベエは目をぎょろりと動かしそこにいる男を睨めた。


「お前がオヤジの首を取るだと!?」


エースは小馬鹿にしたように言った。


「俺だけじゃねぇさ」


それを合図にか、堰を切ったように牢内が五月蝿くなる。下卑た笑い声とともに白ひげに対する誹謗中傷。


「黙れ!貴様らぁ!」


ジンベエが吠える。


「ジンベエ、『火拳』、よぉく覚えておけ。『白ひげ』や『ロジャー』に勝てなかっただけで涙をのんだ『銀メダリスト』達は……この海にごまんといるんだぜ!」


クハハハハ!

クロコダイルは高らかに笑った。

あぁ、愉快だ愉快だ。

なのに、何でこんなにも虚しいのだろう。


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