03
嵐の前の静けさとでもいうのか。航海は順調に進んでいた。今日も青い空の下、長閑を持て余す。
「First name、ジュースでもどうかな?」
「サッチ、ありがとう」
「あー、赤ん坊の具合はどうだ?」
ちらりと横目で伺うようにFirst nameのお腹を見たサッチ。頬が緩む。
「なーんも。今日は大人しいよ、叔父さん」
「そ、そうか。いやよ。この船には女なんてほとんどいねぇーしよ。ナースたちも結婚つったら船下りるし、なかなかねぇかんなー。叔父さん、ドキドキしちゃう!」
慌てたように顔の前で両手を振るサッチ、誤魔化すようにぶりっ子仕草したから「可愛くねぇー」なんて茶化してやった。
「ひどい!First nameちゃん!」
「あははははっ!」
そして、一時の穏やかな日々は崩壊していく。
「隊長!隊長!大変です!」
「お?何だよ」
コック姿のサッチの部下が血相変えて駆け込んできた。
「二番隊隊長のエースさんが!」
あぁ、来たか。
僕くんがお腹を蹴った。[ 310/350 ][*prev] [next#]
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