02
暴走するこの時代を誰にも止められなくなると、赤髪は言った。それを白ひげは恐るにたらぬと。私は恐ろしくてたまらなかった。偉大な白ひげでさえ時代の流れには逆らえぬということ私は知っているから。仁義の世を鼻で笑う人間には偉大なそれをも通用などはしないのだ。だって最初から立っている場所が違うのだから。
「じゃあね、First nameちゃん」
「次に会うのは決戦の日だね」
「うん、その日までまた」
「また」
潮風が髪を靡かす。次に会う時、その時はきっと……。
「ナナー」
「ほら、呼んでるよ」
なかなか動こうとしない彼女を促す。が、彼女は私の目を見つめたまま視線を外そうとはしない。
「First nameちゃん……」
「それ以上は言葉にしてはいけない」
言葉を遮る。強い目で彼女を見れば怯えることもなく私の視線を真っ直ぐ受け止めていた。前の彼女ならすぐに怖じ気づいていたのに。
「ナナちゃん、行って。ここはあなたの居場所じゃないでしょう?」
「……うん」
ようやく踵を返した彼女の背中はもう以前の弱さなど欠片も見えなかった。
ねぇ、ナナちゃん。あなたは護られているだけの寵妃なんかじゃなかったんだね。あなたも、戦ってたんだね。
「First nameさん」
「アイちゃん、ナナちゃんの背中をよく見て。護られているだけの人間になんかなっちゃ駄目」
護られてるだけなんて駄目だ、駄目なんだ。しっかりと前を見ろ。顔を挙げろ。じゃなきゃ、見えるものも見えない。
私は、護りたい。[ 309/350 ][*prev] [next#]
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