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10

昼寝しちゃったからだろうか?目が冴えて寝付けない。

これが元の世界ならば携帯をいじっているうちに、いつの間にか眠ってしまっていたんだけど……。

むくりと体を起こすせば、病院独特の匂いも分からないほど慣れてしまった部屋に窓から光が射し込んでいる。

そっとベッドから抜け出せば、ひんやりとした感覚が足の裏から伝わってきた。一歩踏み出せば軋む床、木造だから仕方がないがこれでは、こっそり移動なんてことは無理だろう。

まぁ、見つかったらみつかったで仕方がない。

一度、船医に教えてもらったように扉を出て左に真っ直ぐ、突き当たりを右に曲がり目の前の扉を開けば……。


「うわぁ」


思わず感嘆をこぼしてしまった景色。

潮風が髪をなびき香りが鼻をかすめる。

初めて見た夜の海は想像とは全く違っていた。

夜の海は真っ暗で覗き込めば闇に呑み込まれてしまう感覚に陥ると思っていた。でも本物の海は月が水面に反射し、落ちてきそうなほど空に敷き詰められた星が海を明るく照らしていた。


「すごい、星がある」

「なんだ、お前の世界には星もなかったのか?」

「あー、そーゆー訳では……」


って、だれ?

勢い良く振り返って見れば、見れば……り、リーゼント!ぜ、絶滅したと思ってた。


「やっほー、First nameちゃん」


このリーゼントは見覚えある。確か……サッチ!そうそうサッチだ。

そうか、まだサッチが生きている時なんだ。先を知ってるっていうのも良いもんじゃないな。


「どちらさまっすか?」

「俺?俺4番隊隊長のサッチってんだ。よろしくな」


知らない振りをしながら生きていくのかと思うと何やら幻想的な景色を見て浮いていた心が沈んでいく気がした。


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