01
天が、割れた。
どよめく両船。迷い子たちは割れた灰色の空を仰ぐ。
「いよいよ、始まる」
ナナちゃんが始まりを告げた。
アイちゃんは難しい顔で空を見つめている。
私は、空から目を逸らす。これから起こりうる現実に目を逸らしたくて。
覚悟を決めた、ナナちゃん。
行く末を見つめる、アイちゃん。
現実に背を向けた、私。
弱さ、か。
「First nameちゃん」
「ナナちゃん」
「しっかり、空を見て」
「……ッ」
「大丈夫よ」
穏やかに微笑む彼女に、彼女が成長したことを改めて思わされる。
「私たちは、もう独りじゃない」
見下ろした両船には数えきれない人、人、人。彼らは正義ではない。でも、彼らは敵じゃない。そう、彼らは味方だ。
「しっかりと今、この瞬間を目に焼き付けて」
あぁ。
「たとえ、物語の結末がどうなろうと、この一瞬一瞬に背を向けたら、きっと私は、あなたは、後悔する」
震える私の手を包み込んだナナちゃんの手は驚くほど冷たかった。
あぁ、ナナちゃんは怖いんだ。怖くて怖くて、それでも気丈に振舞っているんだ。
強くなった。
「私は力を求めなかった。護られることを選んだ」
「私は護られることを望まなかった。私は、力を求めた」
そう、この真っ赤な手で誰かを、大切な誰かを護りたかった。
「私は、私の道を……」
「私は、私の道を……」
もう、迷い子なんかじゃない。[ 308/350 ][*prev] [next#]
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