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あーあ、またですか?
ざわざわする人集りの中から女独特の甲高い喧騒が聞こえてきた。どうやらこの声の主たちが人集りの原因らしい。
「やほっ」
「おう」
「何々、何事?」
人集りの端っこで観戦していたレッドに声を掛ける。中心にいるだろう彼女たちを見ようと首を伸ばしてみるが体格の良い男たちばかりで見えなかった。
「なんか、アイとFirst nameの親友がもめてるらし……って、First name!?おま、お前目ぇ覚めたのか!?」
レッドの乗り突っ込みにざわつきが一瞬にして静まりかえる。
「うん、よく寝たー」
「よく寝たって……」
呆れたように溜息を零したレッド。だけど、安心したように私の頭を撫でた。
「記憶はあるようだな」
「もちろん。そう簡単に忘れるほど私は薄情じゃないし」
「そうだな、情には暑苦しい奴だもんな」
「あれ?なんか嫌味も混じってる?」
レッドに続きイエローとグリーンが抱き着いてくる。危うく窒息しかけたが、そこはまぁ嬉しいから許してやる。おじさんクルーたちにもみくちゃにされてた時、ふと視線を感じた。
「アイちゃん?」
クルーたちは気まずそうに苦笑しだす。苦笑するところが、さすが大人の男だなと変なところで感心してしまった。
「と言うわけで、皆さん心配かけました。この通り、私は元通りに戻りましたので……皆さんどうぞお仕事にお戻りを」
暗に、これから起こるだろう醜い女の戦いなど観るなという訳である。
「First nameちゃん」
グリーンが心配そうに眉毛を下げて私を見た。
「あはは、大丈夫大丈夫。心配しないで」
「ほら、行くぞ。First nameが大丈夫って言ってんだ」
「まぁ、First nameの大丈夫ほど大丈夫じゃねぇこともねぇけどな」
良いことを言ったレッドにイエローがちゃちゃ入れるから蹴っ飛ばした。
「ナナ、俺はここにいるぜ」
「は?いいよ、いなくて」
「俺は大頭たちにお前を頼むって言われてんだよ」
「じゃあ、邪魔しないでね」
するかよと零したナナちゃんの連れらしい青年はつまらなそうに腕組みし壁に寄りかかった。居るけど、一切口出しはしないということだろう。
「さて、言い分を聞きますよ?同志よ」
マルコは諦めたように頭を抱え、ナナちゃんの連れと同じように、否、監視を兼ねてそこへ留まった。[ 306/350 ][*prev] [next#]
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