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ナナ達は白ひげ海賊団の船内に現れた。
「あ、修羅場?」
一触即発な雰囲気に突然現れたナナとミッチーに皆、唖然としている。そして、気の抜けたナナの言葉でいち早く我に帰ったのはマルコ。さすが、マルコ。
「あ、あんたはFirst nameの……」
「親友です!」
マルコの言葉を次いで胸を張って言い切ったナナに、またマルコは一瞬固まりそうになったが顔を振って正気を保つ。
「どうやって来たのか聞きたいのは山々だが、今はそんなこと話してる暇はねぇんだよい」
マルコはナナと現れたミッチーを一瞬見たが、再び一触即発な元凶である彼女に視線を戻した。
「で、どういうこと?」
「見ての通りだ。First nameが、自分の子供を殺そうとしてる」
「え、子供!うそ!やだ!おめでとう!First nameちゃん、とうとうク……あの人と繋がったのね!」
「おい、バカ。露骨すぎだろ」
ぼそっと吐いたミッチーの言葉なんて無視無視無視。ナナは空気も読まず彼女に抱きつこうとした。が、まぁ、それはミッチーがしっかり止める。
「ちょっ、何すんのよ!?」
「バカ、ほんとバカ。読め、空気を」
「無理、だって、だって……」
「なんで、ナナちゃんが……」
言葉を詰まらせるナナに、瞠目していた彼女もまた驚きを隠せず言葉を詰まらせた。
「何で?当たり前じゃん!First nameちゃんが苦しんでるんだから!」
今までのは虚勢だったのか。
「やっと、やっと、大切な人ができたのに。大切な人と結ばれて……愛を知れたのに……」
唇を噛み締めたナナ。
「愛?はは……何それ。恥ずかしい」
「恥ずかしい?」
彼女の言葉にナナが声を低くする。ナナの中の何かに触れたようだ。
「恥ずかしいよ。愛って。何だそれ」
彼女はナイフを握り締めたまま心底阿呆らしいと思っているような表情をする。
「そんなもの、何処にあるんだよ」
吐き捨てるように言った。
「……あるじゃん。そこに」
ナナは真っ直ぐ彼女のお腹を指差した。
「その子が、あなたと彼の愛の証でしょ?」
「やだ、本気で言ってるの?子供が愛の証?……ははっ、あはは!笑わせないで!」
充血した彼女の鋭い眼差しがナナを突き刺した。それは本当に見えない何かに突き刺されたような痛みが全身を迸る。
「……ッ」
「ナナ!」
ミッチーがナナを庇うように背に隠す。覇気か。無意識のうちに彼女は覇気を飛ばしているんだ。
「ミッチーどいて!」
「馬鹿!お前が無闇に近付ける相手じゃ……!」
「どいて!First nameちゃんは私の親友なの!」
ナナの左手に鈍く光るバングル。それは彼女左手にもある。二人を繋ぐ証だ。
「良い加減、目ぇ覚ませ!馬鹿ぁああ!」
「……ッ」
ナナの拳が彼女の左頬に入った。
私たちは迷い子である。
それが運命。
ねぇ、また会えるよね
いつでも遊びに来れば?私は行かないけど
何それー
だって、めんどい
もー、First nameちゃんてばー
ねぇ、First nameちゃん。私たちにはお互いしか分からない絆があるって私は思っているの。あなたはきっと鼻で笑うわね。でもね、あなたが私のピンチに駆け付けてくれた時、本当に本当に嬉しかった。友達って良いなって思ったの。だからね、今度は私が助けてあげる。
きっとこの世界での思い出は悲しいことも辛いこともいっぱいいっぱいあったと思う。でもね、きっと、私が忘れたくないって思うように、First nameちゃんもこの世界で積み重ねてきたものを無になんか返したくないと思うんだ。
だから、私が思い出させてあげるね。[ 303/350 ][*prev] [next#]
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