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21

アイは自分を責めた。あの時の軽薄過ぎる自分の行動を。彼女が水晶に触れてしまったのは不可抗力だった。アイが考えなしに触れようと伸ばした手を彼女が払った時、彼女の手がそれに触れてしまったのだ。


「First name」

「……ッ」


白ひげの豪快な笑い声は聞こえない。眉間に皺を刻み、神妙な顔付きでマルコの背に隠れている彼女を見つめていた。


「まるで、あの頃のようだな」

「すまねぇ、親父。俺が付いておきながら」

「まったくだ!」


項垂れたマルコに追い打ちを掛けたのはサッチだった。珍しく怒りが収まらないと体で表現している。


「お前、アイにばかり気を取られてたんじゃねぇか?俺、前にも言ったよな。自分が白ひげ海賊団の一番隊長だっていうことを忘れるなって。自分が背負っている肩書の重さを自覚しろって。なのに!」

「サッチ、そのへんにしてやれ」

「でも、親父!」

「First nameが怯えてるぜ?」

「……ッ」


興奮するサッチを白ひげが諌める。アイは彼女から目が離せなかった。弱り切った彼女を見て何だか裏切られた気分になった。同時に鼻で笑いそうになった。

なんだ、自分だって弱くて何もできない女だったんじゃん。


「記憶は戻るのか?」


イゾウが言った言葉にマルコは分からないと首を横に振る。


「今、洞窟内に何か手掛かりがないか調べさせてるよい」

「そうか。しばらくは嵐が続く、どっちにしろ留まるしかねぇか」


煙管を咥え窓を見上げたイゾウにならい、皆外を眺める。

雨風が強く叩きつけられていた。それが何故だか余計に皆の不安を駆り立てたのだった。

アイの自責の念は、いつの間にか感化されてしまっていた。


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