16
First nameは腕組みをしながらブーツをこつこつと鳴らしていた。そして何度めかの舌打ちをする。
「遅い!アイちゃん、まだ!?」
「おぉおお、お待たせ致しました!」
「もぉ、まじ待った。ちょー待った」
「すんません」
「謝罪は良いから早く!」
「あ、はい!」
アイは背負ったバックを抱え直して先を走る彼女の背を追った。
「うわー!」
目の前に広がる緑に高揚感が止まらない。思わず感嘆していると腰に手が回った。
「ほら、もう皆行っちゃったよ」
「も、申し訳ない」
「んじゃ、覚悟して」
「え?」
訳も分からず浮いた体。彼女は実に良い笑顔をしていた。そして、絶叫。
「ぎゃあぁあああああ!」
まさに絶叫。甲板から、飛び降りた。いや、落ちた。そう、あれは落ちたんだよ。
収まらない鼓動に動けずにいれば、彼女は私を指差しながらお腹を抱えてゲラゲラ笑ってる。実に不愉快だ。
「おいおい、大丈夫かよい」
「ま、マルコ。私、一瞬魂を手放しちゃうところだったよい」
「そりゃあ、惜しいことしたな」
「え?」
なんか酷いことを言われた気がしたけど、それに反応できないぐらい、ドキドキしていた。やばい、実は快感かも。
こうして島へと一行は降り立った。まだ空には太陽がにっこり笑っていた。[ 296/350 ][*prev] [next#]
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