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生暖かい風が頬を撫でる。海鳥が随分と低く飛行していた。こんなにも良い天気なのに、これから荒れるようだ。
「First nameー!」
甲板で寝転んでいたら、見張り台からレッドの声が降ってきた。声を張り上げて返事しても良いが、疲れそうなので風になって見張り台まで上がった。
「何?」
「見ろ、島だ」
「島!」
にやりと笑いながら差し出された双眼鏡を奪い取って覗き込んだ。そこには紛れもなく緑茂った島が映っていた。
「島だ!レッド!島!」
「久々のあれ、やらせてやるよ」
「まじ!?」
レッド良い奴と抱き着き、私はお腹いっぱいに空気を吸い込んだ。
「しーまーがー見ーえーたーぞー!!」
甲高い声で叫べば、歓喜の声が返って来る。何度やっても、このワクワクはたまらない。
「あっははは!相変わらず、声通らねぇなー!」
「うるさい!」
「お手本見せてやる」
言うだけあってレッドの「島が見えたぞ」は船一杯に広がって、私が言った時の数倍歓喜の声が返ってきた。
「むう」
「ははっ。帰って来て初の島だな」
「……うん」
待ち遠しく島を見つめた。今度は、どんな冒険が待ってるんだろうと。まさか、あんなことになるとは思いもしなかった。
「近寄らないで!お腹の子供がどうなっても良いの!?」
First nameはナイフを高く構えて叫んだ。一同は、ごくりと固唾を呑み動けずにいた。
嵐が島に到着していた。船は出ない。閉じ込められた島で何が起こったのか。[ 294/350 ][*prev] [next#]
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