13
エリザ、聖母エリザ。あなたの、温かさはまるで聖母だ。
「いつまで抱き付いてるのよ」
「いって!」
エリザの胸に顔を埋めていたら、マリアに後頭部を叩かれた。マリアは全然聖母じゃない。
「だめよ、マリア」
「だって、エリザ。First nameったら変態にしか見えなくて」
「ひどーい」
マリアの毒舌は健在です。
「お腹の子は順調かしら?」
「僕くん?僕くんは別段変わったことないよ」
「あんた性別もう分かってるの」
「なんとなく、きっと男の子」
「なんだそれ。まさか、First nameに子供ができるとは」
「ははは、自分もびっくり」
「つまりは、そういうことしたって訳ね?」
ニヤリと笑うマリア、下品極まりない。
「そうだけど?」
「へぇ、いいモノだった?」
「最低」
「どうなのよ?」
「最高に決まってるでしょ?」
本当に最高だった。他の男の人なんて知らないけど、彼と体を重ねるのは幸せだった。幸せ、だった。彼の隣にいるだけで、幸せだった。なのに、どうして……。
「馬鹿!」
「え」
マリアに抱き締められた。
「何て顔してんのよ!」
「……」
「泣きなさいよ!」
「うぅぅぅぅ、やだ!」
やだよ。無理だよ。泣きたくなんかない。誰かに涙なんてみせたくない。彼以外の誰かに泣き顔なんてみせられない。[ 293/350 ][*prev] [next#]
[目次]
[栞]