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10

妊娠を告白した後、わらわら寄ってくるクルーたちをトリオが蹴散らしてくれた。妊婦に障るとか何とか。あまり自覚のない私にとっては苦笑するしかない。


「それにしても、驚いた。まさかFirst nameにガキができるとは。お前、本当に女だったんだな」


聞き捨てならないな、レッド。


「マルコ隊長怖ぇ怖ぇ。あんまりにもマルコ隊長が怒ったもんで、こっちの怒りが消えさっちまったよ」

「イエローもカチンきたの?」

「当たり前だよFirst nameちゃん、僕も愛銃抜きかけたし」


そ、それは怖いね、グリーンさん。


「相手は、まぁ、親父が聞かなかったぐらいだし、無理に聞こうとはしねぇがよ……捨てられたんじゃねぇよな?」


それでも心配だというレッドが眉を下げながら聞いてきた。私は口元を緩めたまま首を横に振った。


「離れなきゃいけなかったの、ううん、ずっと一緒にはいられないって分かってて、私は……」


彼を最初から愛した。


「まぁ、辛気臭い話しは終わりにしようぜ。飯が不味くなる」

「だね、それにしてもこれ美味しい」


サッチと変わらぬ同じ味付けだ。


「そりゃあ、おめぇ、サッチ隊長の料理は美味いに決まってるべ」

「え?」


イエローの言葉に私は固まった。思考も止まった。気付いたらアイちゃんを連呼していた。


「First nameさん、どうしたんですか!?」

「さ、さ、さささサッチが生きてる!?」


掴みかかった私にアイちゃんは苦しそうに仰け反る。慌ててレッドが間に入ろうとしたが、私の力は弱まらない。


「言って!サッチは生きてる!?」

「は、はい!生きてます!生きてますから!私が死んじゃいます!」


必死に訴える彼女に、力が抜けたように手を離す。サッチが生きてる?本当に?だったら、それは……。


「原作通りじゃないです。First nameさん、あなたは変えました。変えられぬはずの流れを」

「そんな、だったら……」


彼との世界も、運命も、変えられたはず。なのに、私は、変えようともせず、抗おうともせず、ただ、ただ、傍観していた。

両手で顔を覆った。顔を挙げたくない。後悔と、それ以上に醜い感情で今、私の顔はひどく歪んでる。


「First nameさん!私たちは未来を変えられるんですよ!」


アイちゃんの興奮が抑えられないといったような言葉は、今の私には何の魅力も感じなかった。

あぁ、彼に会いたい。

時間を戻して。


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