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04

ドクターは始終渋い顔をしていた。触診は終わったのかドクターが「起きて良いぞ」と見向きもしないまま言った。何やらカルテにカリカリと刻んでる。


「ドクター?僕くん、大丈夫ですよね?」


何も言わぬドクターに不安が過った。


「たまげた」

「え」

「本当に妊娠してるじゃねぇか」

「あ、はい」


息を深く吐いたドクターは心底驚いたように額に手を当てて天井を仰いだ。


「胎児に異常はない。……いや、俺も何十年も医者やってる。妊婦だって数えきれないほど診てるし、取り上げてきた。だけど、まさか、ついこの間まで小娘だったお前が……」


何だか嫁にやる親父の気持ちが分かった気がするとか言い出したドクターに苦笑する。

あはは、何だそれ。


「早えもんだな。俺はお前がこの船に来た日だって忘れてねぇぜ?」

「ありがとうございます」

「生傷だらけになってあの馬鹿共と暴れてたのだって昨日のように覚えてる」

「はは……」

「成長したな」

「え?」

「おめでとう、First name」

「あ……ッ」


不覚にも涙が出た。

おめでとう。そんな風に言われるとは思わなかった。そんな風に考えることもできるってことを忘れてた。チョッパーの照れたように言った時のことを思い出す。


「ドクター!」

「おいおい、母親になろうって奴がめそめそ泣いてどうすんだよ」

「だって!」


呆れたように煙草に手を伸ばしたドクターの手が止まる。あ、気を使ってくれてる。


「うぅううう」


どうしよう、私は、まだ、怖い。受け入れられたかと問われたら、すぐに頷けないだろう。


「ドクター、私、私、まだ……ッ」

「そうか……ゆっくりで良いんじゃねぇか?堕ろすつもりはなかったんだろ?」


私は嗚咽を堪えながら何度も頷いた。もう堕ろせないところまできてる。私は堕ろすつもりなんかない。だって、唯一、彼と私を繋ぐのがこの子だもの。私たちが愛し合った証だもの。


「誰の子か聞かないの?」


少し落ち着いてきて聞いてみた。ドクターは煙草の代わりに飴ちゃんを舐めてる。


「んな、野暮なこと聞くか」

「ふふ、ドクター、男前」

「何だ、変わってねぇじゃねぇか」

「え」

「妙に敬語だしよ、落ち着いてたから変わっちまったのかと思ったがな。まだまだガキだな」

「むぅ、ガキは妊娠なんかしませんよ」

「……だな」

「う」


墓穴を掘った。意地悪い笑みを浮かべたドクター。目がエロい。


「ま、俺が騒がなくても、他が大変だろうな。がんばれよ」

「……うぃーっす」


まだ船に戻ったばかりなのに、戻っていってる自分にあまり抵抗はなかった。むしろ……。


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